モード過ぎるヘアスタイルが理解されず落ちぶれかけたヘアサロンの大逆転
目次
新しい街におしゃれな店が次々開店
今回は、スタイルがモード過ぎて土地柄に合わず、苦戦していたニューヨークスタイルのヘアサロンのお話です。
以前、仕事をしていた街は、都心から15分で行けるところでしたが、最近まで周りは畑ばかりでド田舎だったところでした。
ここ10年くらいの間に区画整理で瞬く間におしゃれな街になりました。
駅前には、至る所に新しいお店が開店し、有名なチェーン店がいくつも立ち並ぶようになりました。
その駅前に新しいヘアサロンが開店しました。
そのお店は、名前もよく知られた高級ヘアサロンの支店でした。
NYスタイルのヘアサロン?
都会の本店から新しいサロンに差し遣わされたのは、見た目もスタイリッシュでまさに都会のイケてるお兄さんという感じの店長さん。
カラーやカットの腕も良いらしく、ニューヨークで修行して、いろいろな大会で優勝したとプロフィールには書いてありました。
よく知られているチェーン店だし、全部で2万5千円もするので、さぞかしカットもカラーも素晴らしいだろうと期待に盛り上がっていました。
ところが、店長さんは、最近、ど田舎から街になったばかりのこの街で、モードなヘアスタイルをガンガン勧めてくるのです。
提案されるスタイルは、目立ち過ぎの奇抜な髪形なので誰も街を歩く勇気がありませんでした。
私もたびたび「普通でいいですから〜」とやんわりと断っていました。
そのヘアスタイルは何と呼べばいいのか
ある時、私の前にカットしてもらった25~26歳くらいのお姉さんは、どこから見ても【ちびまるこちゃん】でした。
この時は後ろ髪をバリカンで青々と刈られていて、今にもまるこちゃん〜と呼ばれそうな可哀想なスタイルでした。
ananやelleのモデルさんなら、スタイリッシュな後ろ髪でかっこいいと思えたのでしょうが。
また別の日にカットしていた40歳くらいの男性は、前回のカットが若造り過ぎて女子社員に笑われたと言っていました。
案の状、席に座ると開口一番に、「この前のは短すぎだ。今度は短くしないでくれ」と注文していました。
また、ある時のお客さんは、細身で綺麗なお姉さんでした。
カットが終わって帰る時に私の前を通りすぎたのですが、前髪が異常に長くて、まるで【ゲゲゲの鬼太郎】でした。
またある時は、なぜか全体をみごとなくらいツンツンに短く切られて、【針千本カット】にされた人がいました。
またまたある時は、滝川クリステルのようなスタイルを要求していたのに、どう見ても【小学生男子?】のような髪型にされた人もいました。
悪い口コミの嵐で店長さんは円形脱毛症に
スタイル雑誌で髪型を選んでも、店長さんのいいように解釈されて、違う髪型になってしまうという不思議なサロンでした。
そういう状況でしたから、あまりお客さんはいませんでした。
店長はニューヨークで修行して、海外の粋なスタイルが得意だったのかもしれませんが、その街の人々には理解されませんでした。
ここはモードなスタイルで働く人や場所もなく、モデルさんのようなスタイルの人もいない郊外の地味な新興住宅地だったのです。
そのため予約サイトのホットペッパービューティの口コミに悪い評判を散々に書き込まれて、店長さんは円形脱毛症になってしまいました。
傷心の彼は、自信を失い、気持ちは荒れていきました。
かつては感じが良かったのに、お客の前で店員を怒鳴りつけるような人になってしまいました。
その後、そんな雰囲気に抵抗があり、私はサロンに行かなくなりました。
ある出来事で店長さんのカットの腕が本物だったことを知る
それから、1年ほどたったある日のことです。
サロンの隣にセブンイレブンがあったのですが、そこのバイトのお兄さんが、突然めちゃくちゃカッコよくなりました。
少し小太りで、動作の鈍いお兄さんでしたが、ある時、就活のために髪型を変えたら、別人のようなイケメンになりました。
あまりにもその髪型がカッコよかったので、私は思わず聞いてしまいました。
すると、あの店長さんがカットしたというではないですか。
店長さんは、傷心のどん底から立ち直り、いい仕事を続けていたのです。
どう見てもモテる系ではないバイトのお兄さんは店長さんによって見事に素敵な男子に変身していました。
この衝撃的な出来事で、私は、店長さんの腕が、本物だったことを理解しました。
カットに周りの人々の賞賛が集まる
NYスタイルを知らず、あまりにも斬新なヘアスタイルだったために、最初は理解者がいないだけでした。
その後、店長さんの才能は、徐々に認められるようになり、カットのために街の外からも人が集まるようになりました。
職人気質で我が強く、自分がいいと思うスタイルをガンガン勧めてくる店長さん。
ようやく彼に時代が追いついたようです。